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表紙


『東洋亜鉛のあゆみ―リサイクルの新たな航海へ』

A4判、上製(オールカラー、化粧函付)、188ページ、2008年10月発行


長い歴史を振り返り、「備忘録」を残す最後の機会として制作を決意、
新世代へのバトンタッチの意思表示も果たせました。

東洋亜鉛株式会社 代表取締役社長  林   信孝 様
業務部 統括課長 内山 昌之 様

創立83年にはじめて社史を発刊されたとお聞きしました。

完成社史

80周年を迎えた2005年と2006年、当社が2年続きでスローガンに掲げた「80’sリスタート」には、伝統と実績に安住せず自ら切り拓く、歴史を「変革」していくという思いが込められています。その変革路線のひとつとして2007年3月、当時38歳の私が4代目社長に就任しました。
当社はここ数年、急激に社員の年齢構成が変わり、若い人が増えました。どこの会社も同じ悩みをお持ちかもしれませんが、会社の歴史を知らない層の比率が高くなってきたわけです。自分が勤めている会社をよく知らずに仕事をするのは“自分自身”を知らないのと同様、おかしな話だと思います。
私自身、入社以降の出来事はともかく、創業の経緯、戦前・戦後の復興時代の苦労、技術革新のあゆみなど、正確な歴史は知りません。先代社長(現会長)の時代をよく知る社員が辞め、記憶はどんどん薄れていきます。周年を待っていては間に合わない、今を逃したら永久に埋もれてしまうと考え、備忘録としてでもとにかく残さなければと社史発刊を決意しました。

どのような編纂体制で臨まれましたか。

完成社史

社史編纂委員会の発足は就任4ヵ月後の2007年7月でした。委員長は林良行(当時、関連会社である有限会社東洋商会在籍)にお願いし、アドバイザーとして古い時代のことをよくご存知だった三好一龍顧問(当時)にも加わってもらいました。私や現会長をはじめ、役員クラスは原稿チェックなどで当然関わっていますが、編集実務については、林良行と途中から参加してもらった内山課長の2人が進めてくれたようなものですね。

資料整理の過程で「50年史」が出てきたとか。

完成社史

2代目社長の林孝一がすべてを記録に残す性格だったので、昭和30年代以降はたくさん資料が残っていましたが、戦前の資料は東京大空襲で消失しており、当社は過去に社史を制作していないため昔のことは林孝明(3代目社長・現会長)の記憶に頼るしかないと思っていました。しかし実際に資料探しを始めてみたら創立50年の段階で会社の歴史をまとめた社内レポートが作られていたことがわかったのです。書籍の形にはなっておらず、どこまで検証されているかは不明でしたが、創業時から戦後までの歴史を知る手がかりになりましたし、このレポートのおかげで創業者夫婦の人となりや昭和初期の業界動向などもうかがい知ることができました。

「沿革」「社員親睦」「資料」の3つで構成されています。
それぞれのこだわりを教えてください。

完成社史

「沿革」の文章は一般的な社史とは一味違う、読み物として面白いものにしたいと考え、「プロジェクトX 挑戦者たち」(書籍版)を数冊手掛け、人物をテーマにした執筆で定評のあるライターさんにお願いしました。ただ「プロジェクトX」はプロジェクトを成功に導いた特定の人物に脚光を浴びせる描き方が特徴ですが、当社の場合、誰か1人に偏らないよう考慮して、OBを含めなるべく多くの人を取材対象にしました。また、できた社史をOBにも配布したいという思いから社員旅行等の思い出の写真を多数掲載することで当時の社員が歴史の一部を担ったことを表現しました。「資料」に当社事業と密接なかかわりのある素材価格や為替推移を掲載したのは、グラフを見ただけで会社の歴史背景がわかるようにと考えての工夫です。工法も大きく変化しましたから、口絵部分で過去と現在の作業工程を写真で比較させました。当社の歴史をより明確に意識してもらうためのこだわりのひとつです。

サブタイトルに込められた意図は。

創業から80余年、当社は近代日本における再生亜鉛事業を開拓し、“フラッグ・シップ”(旗艦)として常に業界の先頭を走ってきたという自負を持っています。今後業界では今以上に熾烈な競争が始まるかもしれません。私の代で成し遂げなければならないことはたくさんあります。その舵取りを任されたという意味をサブタイトルに込めました。

編纂に当たってはどういったことに苦労されましたか。

完成社史

歴史的事実は見る人の立場によって評価が変わります。活字になるとそれが歴史となって残りますから文章表現や正誤チェックにはかなり気を遣いました。私がチェックするのは一部ですが、会長は何度も眼を通して確認していました。また、登場する社員に偏りが出ないよう、取材対象の選択にも気を配りましたね。文章だけでなく、なるべく写真を掲載したいと考えていましたから、写真の選択にも時間をかけました。

配布後の反響はどうでしたか。

完成社史

取引先、同業他社、社員、OBのほか、取引銀行にもお配りしましたが、最も喜んだのはOBの方々です。自分たちの歴史が克明に記録されているわけですからね。同業他社で社史を制作している会社はほとんどないので、年表の「業界の動き」、素材価格や為替推移のグラフなどは重宝しているとの声をいただいています。取引先などからは「文脈がユニークで読んで面白かった」と評価していただきました。「沿革」に登場する当人たちは少し面映い気持ちになりましたが「読んで面白いものを」という狙いは成功しました。亜鉛リサイクルに特化した会社は珍しいということで、発刊して1年半経った今も国内外の大学から寄贈依頼があります。

これから社史を担当される方にアドバイスをお願いします。

長い歴史を振り返り、備忘録として残す目的でスタートしましたが、こだわりを持って取り組んだ結果、制作当初考えていた以上のものに仕上がりました。同時に、新しい世代へ会社をバトンタッチしたのだという明確な意思表示になったと思っています。社史を制作するのは大変な作業です。中途半端な思いで作ると中途半端なものしか出来上がりません。意図を明確にし、情熱を持って取り組むことが大切だと考えます。また、作業に関して言えば専属は無理でもそれに近い形で関われる人員配置をした方がいいでしょうね。役員クラスが参加しないと古いことはチェックできません。日頃の横の繋がりも大事になると思います。

ありがとうございました。

■東洋亜鉛株式会社・プロフィール
亜鉛のリサイクル精錬を営み、今年創立85年を迎えた歴史の古い会社。製造販売する再生亜鉛は再生品の域を超えた品質とコストパフォーマンスの両面で高い評価を得ている。

http://www.toyo-zinc.co.jp/

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