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表紙

島津製作所 航空機器事業部
『明日の翼に―半世紀の歩み』

写真と生の声をふんだんに盛り込み、OBには懐かしさを、現役従業員にはこれからの指針を与えられる社史を目指しました。

B5判 2分冊【上製本(88頁)、並製本(80頁)】+DVD

株式会社島津製作所 航空機器事業部 事業企画部長 髙野壽則様

事業部史全体のデザインや“本”としての風合いに強いこだわりをもって制作を進められましたが、そのあたりの工夫やご苦労はどのようなものがおありでしたか?

完成社史

まず企画するにあたって、将来「社史は歴史的事実を確認するもの」として利用されることを念頭に、「事実をできるだけ正確に、そして極めて淡々と記述すること」としました。したがって年代などについては、業界からの発行物や全社の『100年史』など、信頼がおけるものですべて確認を取りました。

さらに、「社史は読まれる機会が多くない性質のもの」ということを踏まえ、「それなら苦労してたくさん書くよりも、OBの方々が事業部史を開くと“鮮やかに その時代が甦るもの”にしよう」と決めました。つまり“視覚的に過去に戻れるもの”として「写真アルバム」のような形態を目指しました。また町並みやファッションなど、当時の生活感漂う写真を掲載し、時代感を出そうと考えました。

そういったことを総合して、本全体のイメージもいかにも “社史”といった重々しい物ではなく、品よくオシャレで、かつ落ち着いたものを目指しました。京都府立図書館に通ってさまざまな出版物を手に取り、自分なりイメージ固めをしようとしましたが、なかなかイメージ通りのものがなく、書棚の本を頭が痛くなるほど読んだことを憶えています。

本事業部史は、正史にあたる『明日の翼に』と、秘史にあたる『挑戦の軌跡』との2分冊となっていますが、2分冊にされた意図にはどのようなものがあったのでしょうか?

完成社史

まず『明日の翼に』は歴史的事実の記録に加え、OBの方々が思い出に浸たれるものを目指して制作しました。

一方『挑戦の軌跡』は、現役の従業員やこれから入社してくる従業員の方々に向けたもので、事業部の歴史を知り「自分たちが今あるのは、こうした過去の方々の苦労があってのことだ」ということを理解した上で、さらなる発展を目指してもらおうと考えて制作しました。

配布先と、配布後の反響についてお聞かせ下さい。

完成社史

配布先はそれぞれ、『明日の翼に』については従業員(自他部門)・OB・協力会社・顧客で、『挑戦の軌跡』については従業員・OBです。

事業部の従業員からは「昔の話がよく理解できた」「大変面白く読みやすかった」、社内他部門からは「事業部の現在の主力製品が生まれた背景などよくわかった」、OBからは「よくぞ事業部史としてまとめ上げてくれた」「高齢で字を読むことも面倒になっていたが、本当に読みやすく写真も多く懐かしく拝見した」と、各方面から好評をいただきました。

しかし事業部史の真の価値は、将来訪れるかもしれない経営面での苦境や、何かの岐路に直面した後輩たちが、この本を手にして何かのヒントを得たり、勇気づけられたりするかどうかだと思います。

正史 『明日の翼に』では写真を多用し、ビジュアル的な要素を重視した内容となっています。制作に際してどのような工夫・ご苦労がおありでしたか?

完成社史

上記のような「写真アルバム」を考えていましたので、とりあえず写真収集から始めました。

まずOBの方々に昔の社内の写真を募集しましたところ、寄せられた写真は慰安旅行や送別会、忘年会などの宴会ものばかりで、普段の仕事場の風景やビジネスに関連した写真が少なく、大変困りました。

社内でも古い写真がないか、倉庫などを探し回りました。すると不思議なことに、撮影など貴重であった時代の写真が多く残っており、現代に近づくにつれ、カメラが普及しているのにかかわらず、意外に残っていないことに気づきました。思うように集まらず、一時は企画を変更しなければならないかと、非常に心配にもなりました。

京都の町並みも是非掲載しようと写真を探しましたが、結構残っておらず、ほかで入手しようにも、お持ちの新聞社などを探し当てるのに苦労しました。

秘史 『挑戦の軌跡』は、取材内容を中心にした物語風の描写となっています。制作に際してどのような工夫・ご苦労がおありでしたか?

完成社史

読者対象として想定していた現役や将来の従業員は、テレビや漫画で育った若い世代です。彼らが硬い文書を好んで読むとは思えませんでしたので、物語風に記述することにしました。そうすることで、当時の状況や登場人物を活き活きと再現でき、また伝えたい内容の表現に幅を持たせることができると考えました。しかし、そういった社史の事例があまりなく、果たして作り上げることができるかどうか、まったく自信がありませんでした。

制作にあたっての苦労はまず、“話のネタ”の設定でした。

歴史は英雄、すなわち経営者などの一部の人々のみが作るものではなく、一般従業員それぞれも1人1人のドラマがあり、そのドラマの集積されたものが会社全体の歴史を形成していくはずです。が、それではいくら紙面があっても足りませんし、そんな話をすべて掘り起こすことは到底不可能です。そうかと言ってヘタに話を絞ると、「なぜあの話があって、この話がないのか」と言われるのは目に見えています。

そこで 「総合年表」を作成して50年間を概観したところ、1 0年毎の5つの期に区分できました。それから各期にキーワードを設定し、 先輩諸氏から言い伝えられてきた有名なエピソードの中から、事業の大きな節目となった出来事を 各期毎に 抽出しました。その節目で活躍した人物にスポットを当てました。 取材の人選については、内容が偏ったり、散逸したりしないよう配慮して行ないました。

完成社史

次に問題になったのは、“脚色する”ということです。

たしかに「事実は小説より奇なり」という面もありますが、現実にはあっけない幕切れになる話も多くあります、その結果は偉大なものであったとしても……。それを事実からできるだけ遊離しないで、なおかつ読みものとして感動的なところへ持っていくことに苦労しました。そういう点では、 各章 について、全体の構成や話の流れを作っていくことが一番苦しい作業でした。なかなか面白くならない話の場合は、さらに昔のことを知っている方に詳細な話を聴き出して、さらにネタを探し回りました。

いざ書く段になってみると、話の展開と紙面数の問題に頭を悩ませました。

たとえば「意外な 結末を迎える」話しがあったとします。 その新展開を記述するまでは読者には話の全容を悟られることなく、「これからどうなるのか」と思わせながら焦らしていかなければ、感動的な結末にはなりません。そのためには、それなりの行数を必要とします。しかし紙面数の都合上、行数に限りがあるせいで話の展開が早まってしまうことになり、面白さがなくなるという事態にぶつかりました。こうなると、どこをカットすべきかが問題となり、何度も何度も読み返し、カットしたり書き加えたりすることになりました。何度も読んでいるものですから、内容の新鮮さがなくなって読み飽きてしまい、初めて読む方々がどういう印象を持つのか、わからなくなってきてしまいました。これには本当に骨を折りました。

完成社史

ただ、登場人物の性格などを踏まえてセリフを書くのは、大変面白い作業ではありました。

秘史の原稿ができあがりつつある頃に、ふと「自分が大変お世話になった大先輩の方々を紙面に登場させて、勝手にいろいろなセリフを喋らせ、話を展開させたのは、その先輩たちを紙面上で操っていることになってしまうのではないか」と懸念するようになりました。 事実に基づいているとは言え、セリフや場面は脚色していますので、これは 大変失礼なことをしているのではないかと思い、登場いただく方々には事前にこの物語を読んでいただき、しっかりと了解を得なければダメだと考えました。

その内1人でも「何だこれは」とお叱りを受ければこの企画は没になってしま います。黙って原稿を読まれている間は、心臓がバクバクでした。突然「クスッ」と笑われたりすると、ホッとして、それから「よし!」と心で叫びました。気が付くと手は汗でズルズルでした。 結局、皆さんが企画の趣旨を理解しご賛同くださりましたので、無事発行する運びとなりました。本当に、理解あるすばらしい先輩諸氏でした。

これから社史・事業部史を制作される方々にアドバイスがありましたら、お願いいたします。

社史はさまざまな面に気を配らなければならず、結局無難な選択をすることが多くなってしまいます。そういう意味では「歴史を淡々と記録していく」という主旨で制作されるのも1つだと思います。

そこで重要なのは、「何のために社史を作るのか」を明確にして企画されることだと思います。そして何か記録以外に価値を持たせようとしたら、少々高いハードルであっても、それを乗り越えなければよいものはできません。時として危険な領域に足を踏み入れることがあるかもしれませんが、何事でもリスクを冒さないとよいものは作れない、と考えています。

また、「50年という時間はあまりにも長い」と実感しました。当時、経営の中核におられた方が「その時何を思い、経営の決断を行なったか」などということを掘り起こすのは、非常に大変な作業になります。普段から記録を残しておくことの重要性も痛感しました。

どうもありがとうございました

■島津製作所 プロフィール

http://www.shimadzu.co.jp/

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