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表紙

『パインアメ物語』

社員に会社のDNAを理解させるために、どうしたら会社のマインド、哲学を思いっきりギューッと絞り出せるかにこだわりました。

文庫判224頁、並製本 2001年1月発行

パイン株式会社 代表取締役社長 上田豊 様

はじめて作られた社史で、いきなり日本経団連の1万冊ライブラリーに選ばれましたね。

上田文庫本スタイルという装幀が変わっていることから選ばれたようですが、はじめから普通の社史を作る気はありませんでした。

■“普通でない社史”というと、何を狙いにされたのでしょうか?

上田そもそも社史を作ろうとしたのは、創業者である会長がやってきたことをキチンと整理することが僕の仕事だと考えたからです。なぜなら、キチンと整理しないと次にどうつなげるかわからないからです。つまり、100年目を目指すために50年を整理する――そういう発想。だから、この社史を作ることで、我が社は何をしたいのか、将来に向かってどのような道をつくろうとするのかが見えてこなくてはならない、ということです。

それを実現するために、具体的にはどんな社史をイメージされたのですか?

完成社史

上田一言でいえば、社員に我が社のDNAを理解してもらえる社史です。そこで、「入社したての若い人でもすぐ判る+3時間あれば読破できる+邪魔になら ない」ことをポイントにしたんです。

私はこういうとき、もらった相手の立場にたって考えてみるんです。箱入り、ハードカバーの分厚い社史を私がいただいたらどうするか。「ありがとうございます。素晴らしい社史ですね」とは言っても、なかなか通読はしないですよね。そうではなく、読んでもらえる社史にしたかった。頭を乗せる枕になる社史じゃなく、頭の中に入る社史にしたかった。要は格好じゃなく、中身を問題にしたということです。

確か、そのリクエストを受けて、読みやすく、持ち運びやすい文庫本スタイルを 提案させていただいたんでしたね。

完成社史

上田最初プレゼンを受けたときには少しビックリしましたけど、よく考えてみると“なるほど”と。京都の老舗の和菓子みたいな、豪華な装幀で対外的には体裁のいい社史なんかプレゼンされたら、きっと私は採らなかった。だから、ウチの「実現したいのはコレなんや!」という“思い”が出版文化社さんを動かしたんだと思ってます。

それはありがとうございます、どんどん動かしてください。そうすると、読者としては社員の方々を主体に考えられたということですね。

上田はい、社外に目を向けると、どうしても万人うけを狙うことになる。しかし、万人にうけるということは、誰も読まないということだというのが、私の考えです。要するに、万人うけというのは、グロスの扱いをするということ。やりたかったのはその逆で、ネットのなかのネット、ネットの真髄といえるものです。

グロスとネットといいますと、グロスでいくら? というように使うときの全部 という意味のgrossと、それに対する正味という意味のnetですね。

完成社史

上田そうです。誰にも見場がよい、つまり外見重視のものをグロス狙い、中身を重視したものをネット狙いとした場合、ネットの真髄を狙うというのは、中身のもうひとつ中の濃い中身を目指すということです。社史で中身というのは会社がやろうとしていること、そのさらに濃い中身というのは、会社のマインド、哲学をわかってもらうことだと考えたわけです。それをどうしたら、思いっきりギューッと絞り出せるかにこだわったんです。

それが文庫という装幀と、物語形式の本文というスタイルにつながるわけですね。

完成社史

上田そうです、それと黄色というイメージカラーです。黄色は非常に目立つ色ですし、皇帝の色とも言われています。ヨーロッパの宮殿には黄色を基調にしたものも多いんですよ。実は、いずれ本社ビルも黄色にしようかと考えています。タクシーに乗って、パインのビルといったらすぐ、「アア、あの黄色いビルですね」とわかってもらえるような。背が高いばかりがランドマークじゃないんです。パリのムーランルージュなんか、低層建築だけれど、あの風車のデザインでとても目立っていますよ。

徹底的にアイデンティティを前面に押し出しているということですね。

完成社史

上田そうです。我が社は誰で、何をしたいのかと。それを社員にわかってもらうためには、そのための設定をしなければいけない。

しかし増し刷りもされましたし、社外にもたくさん配られていますね。

上田外への発信は常にしていきます。だから取引先にも、ホームページを通じて希望されるお客様にもお配りしました。大きくいえば、地球村を目指した日本のアイデンティティをどうするか、そのために地域のなかの我々の事業をどうするか、それで仕事は自ずと決まるというのが我が社のスタンスだからです。もちろん、中身の濃いものを発信しているわけですから、本当の意味で理解していただいける方は1割もあればいいほうだと思っています。そのわかってくださる方々と、長くおつきあいを続けていきたい。

実際にどんな反響がありましたか?

上田経営者の方々は、やはり創業時の親父(会長)の話がいちばん印象に残るようです。とくに失敗談。商売を自力で始められた方は、どんな方でも最初はいろんな失敗を繰り返し、それを克服して成長する。そこが実感としてわかるんですね。だから、アメのメーカーの話としてではなく、モノづくりの話の一環として読んでくださいます。

ホームページのお客様や、社員の親戚の方々の反応で印象的だったのは、子供さんが読まれて面白いと言われたという感想がたくさん寄せられたことです。物語スタイルで平易に書いたことで、予想外の訴求力があったんですね。ファンが増えるという意味で、これはすばらしいことだと思いました。

肝腎の社員の方々の反応はいかがでしたか?

上田それはいわずもがなで、これで「我々は本気やぞ」という気持ちを広げられたからこそ、その後の危機に一丸となって対処できたし、その成果を内外に発信する55周年記念誌ができたんです。

ありがとうございました

■パイン株式会社 プロフィール

「愛され続けて50有余年」のパインアメで有名。「お客様の安全・安心をめざして」をモットーに躍進を続けるキャンディのメーカー。

http://www.pine.co.jp/

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