出版物を決定づける8つのポイント

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社史や記念誌等を制作するとき、その条件は企業や団体によってさまざまです。  「基本方針(発行目的や出版物の性格)はどうするのか」「スケジュールはどうするか」「どのような組織で作るのか」「誰に見て欲しいのか」「予算はどうするか」…。このようなポイントを一つずつ決定していくことで、社史や記念誌の骨子が次第に明らかになっていきます。

1 Why―発行の目的―

目的をどこにおくかが社史編纂事業のかなめとなりますので、十分な検討が大切です。戦前からの長い伝統をもつある精密機器メーカーが、社史を出すことになりました。この会社は終戦の混乱期に分社・合併を経て、2度ほど社名変更を経験されました。最近になって、戦後の混乱を乗り切った「中興の祖」でもある現社長が健在のうちに会社の歩みを記録に残しておこう、ということになりました。しかし、多くの人間関係、しがらみが錯綜して混乱期の扱いをどうするか統一した見解を下せないまま編集作業を進めたため、結果的には戦前の歴史を抹消することになり、会社再建に功績のあった「中興の祖」社長だけがクローズアップされる記述となってしまいました。  これは、“目的”という基本方針を固めないままに「社史」づくりを行い、担当者の苦労にも拘わらず非常に不十分なものを作ってしまった極端な例です。

2 What―本の性格づけ―

「社史」づくりでは、会社の歴史の中で何を重視するか、つまり視点をどこにおくかでその出版物の性格がほぼ決まります。 厳選した資料をもとに、「これが当社の正しい歴史だ」と自信を持ってまとめることができれば、それは会社にとっての「正史」です。もし「周年か何かの行事等を祝って記念式典をしよう。そしてその模様を中心に会社の歴史もついでにまとめてみよう」ということになれば、それは「記念誌」となります。  さらに「工場史」、「広告史」、「製品・パッケージ史」、「創業者伝記」など視点は数多くあります。  また、書籍という形にとらわれることなくVTR、CD−ROM、DVD等を活用するのもこれからの新しい分野といえます。

3 When―発行の時期とスケジュール―

スケジュールの設定ですが、まず発行時期をいつにするかということが、発刊の効果を大きくするうえでの決め手です。 企業にとっての節目というのは何も周年に限ったことではありません。合併・CI導入・株式上場・新工場竣工・社長交代等、その企業にとって大きな意味を持つできごとであれば、立派な節目といえます。  スケジュールについて肝に銘じておきたいことは、無理をすれば短期間の編集作業も不可能ではないが、歴史を正しく検証し、資料類をきめ細かく収集・分類するにはそれなりの時間が必要だということです。

4 Who―誰が担当するか―

「社史」「記念誌」等の編集には“8つのポイント”を検討して出版物のコンセプトを決め、編集段階で発生するであろうさまざまな案件を決裁する編纂委員会と、そこで決められた方針に則って実務作業を担当する事務局の設置が必要です。  編纂委員長は、出版物発行の目的を十分に理解して物事を進め、さまざまな意見が出たときに、誰もが納得できる決定を下せるリーダーシップのある人が望まれます。  事務局は、いってみれば実働部隊です。資料や写真の収集、分類から始まって、取材の段取り等の社内調整、外部スタッフを活用するときの管理や打ち合わせ等、実に幅広い作業を伴います。普通は、総務や広報など会社全体を把握しやすい部署の人が選ばれます。

5 Where―どこで作るのか―

事務局は、簡単に言えば出版物づくりのベースキャンプです。各種情報の受・発信、資料の整理や保管、編集作業、外部スタッフとの打ち合わせ等にはどこがいちばん適しているかという観点から場所を決めます。静かで行動に便利な、他部署から独立した部屋を用意できれば、理想的です。

6 How―編集作業の進め方―

この場合、事務局で担当する作業と外部スタッフに依頼する作業の分担を最初に明確にしておくことが肝心です。資本金推移や組織の変遷等の基礎資料や写真・図版の収集などはほとんど社外スタッフによりますが、年表作成はどのような分担で進めるか、本文原稿の作成はどうするかなど、社史編集という共同作業では立場の違うスタッフ同士の協力がとくに大切です。とくに、最終段階に入ると事態は急迫してつい頭に血がのぼりがちですから、そういうときこそ、冷静に全体を見渡すことができるスタッフがいることが、立派な社史づくりには欠かせません。

7 How many―部数や体裁―

部数は、その出版物をどの範囲に配布するかで決まります。ぎりぎりの部数しか印刷せずに、すぐに増し刷りをするようなことになると、さらに費用がかかりますから、保存用も含めて余裕のある部数を印刷するのが無難でしょう。注意したいのは、部数の変動によって変化する費用は制作費全体のごく一部だということです。つまり、部数が半分になったからといって印刷費は半分にはなりません体裁は、頁数や原稿枚数、写真点数、色数、紙質、それに製本の形や装幀などさまざまな要素がからみあいます。そこで制作する出版物の目的、性格、それに費用等を勘案して本の形態を決めることになります。いずれも出版物の見栄えや、費用に大きく影響しますから、企画の段階から慎重に検討したいものです。

8 How much―必要な予算―

予算について、うっかり忘れがちなのは、予定外の出費に備えて予備費をみておくことです。急に著名人と対談が決まって謝礼が必要になったとかいったことがこれに当たります。さらに忘れてはならないことは、配布費用を確保しておくことです。印刷会社から近い本社に一括納品というのであれば問題ありませんが、多くの事業所に分割納品ということになると、梱包・発送費、運賃などが必要になります。個人宛に多くの部数を送付する場合は、なおさらです。

出版物を決定づける8つのポイント(5W3H)

Why (1)発行の目的
  • 何らかの節目をきっかけに、気分一新を図る
  • 収集・整理した記録をまとめて後世に残す
What (2)本の性格づけ
  • 会社の歴史の中で、何を最重視するか考える
  • 会社の特徴を端的に表せる方法は何か
When (3)発行時期と日程
  • 発行日をどのような節目に合わせるか
  • 発行日を順守するためにはどのような日程を組めばよいか
Who (4)誰が担当するか
  • コンセプトや方針を決める編纂委員の人選
  • 実務作業を担当する事務局の人選
Where (5)どこで作るのか
  • 資料の収集・整理や関係各位に協力を依頼するのに最適な場所
  • 打ち合わせや編集作業に支障のない場所(室)の設置
How (6)作業の進め方
  • 社内において進める作業の範囲はどこまでか
  • 外注作業の範囲とその進め方をどうするか
How many (7)部数や造本
  • どの範囲に配布するかで部数を計算
  • 可能な予算から部数や造本の形を逆算
  • 発行の目的や性格にふさわしい頁数、写真の点数、資料の範囲
How much (8)必要な予算
  • 発行の主旨を満たすために必要な予算はどれくらいか
  • 定められた予算ではどのような出版物が制作可能か
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