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表紙

『南海電鉄最近の10年 2015-2025 Legacy into the Future』
A4版並製本 カラー128頁 2025年12月発行

『NANKAI社史 FROM 1885
TO 2025』
140周年記念誌をウェブ化+既刊年史PDFをライブラリー化 2026年4月公開

南海電気鉄道株式会社様は2026年4月、祖業である鉄道事業を分社化し、株式会社NANKAIとして大きく生まれ変わりました。歴史的な転換点での社史編纂にあたって、どのような工夫が必要であったのか、お話を伺いました。

株式会社NANKAI
総務広報部(広報担当)
山田紗栄様、田渕留衣様、園口勇一様

企業は生き物ですので、10年のうちに組織のあり方が大きく変わる場合があります。
社史編纂においても柔軟に対応し、その時点のリアルな姿を残すことに意義があると感じました。

今回発刊された社史の発刊目的はどのように方向付けられていましたか?

山田:当社ではこれまで、10年ごとに社史をまとめてきています。分厚い正史であった100年史のあとの110年からは「既刊社史のダイジェスト+近10年沿革と重要トピックス+企画記事」という組み合わせで記録を積み重ねてきています。今回の140年史もその流れを継承し、直近10年間の歩みを体系的に記録・保存・活用することを目的としました。

また、編纂を広報部門が担当したことから、社内外からの問い合わせにも対応できるよう、事実関係を的確に整理した内容とすることを目指しました。

田渕:当社では1990年代半ばに入社した50代の方たちの人数が多く、数年後には一気に引退を迎えます。またキャリア採用も増加し、当社の歴史を知らない若手社員と中途社員が増加しているのです。そのため社史編纂によって歴史・経験の継承を図ることが重要な使命なのではないかと思います。

山田:社員の皆さんに自社の歴史や価値観への理解を深めてほしいのはもちろんなのですが、同時に、歴史への理解・共感によって仕事へのモチベーションを向上してほしいという点も、社史編纂の大切な目標かなと思っています。そこで編纂メンバーで話し合い、これまでトップと沿線在住、出身の著名人との対談としていた企画記事を、トップと若手社員の座談会としました。社員が会社の歴史を自分ごととして捉えられるようになることを期待してのアイデアです。座談会が終わった後も、参加メンバー間の横のつながり、コミュニケーションも生まれているようです。

トップと若手の座談会 写真:トップと若手の座談会 画像を拡大
トップと若手の座談会 トップと若手の座談会 画像を拡大

電鉄事業が分社化され商号がNANKAIと改められたように、グループ事業全体が大きな転換点を迎えつつあります。社史ではそれらについてどのように表されましたか?

園口:過去に担当した120年史、130年史では、運輸・不動産・流通といった事業セグメントごとに記述していました。今回の140年史も、その手法を継承しようとしたのですが、近年は部門の垣根を越えた“共創”の取り組みが増え、従来と同じ分け方では無理が生じました。そこで編纂メンバーで意見を出し合い、現在の組織に合わせて「公共交通」「まちづくり」「事業戦略」という括りで記述したところ、部門間の共創の取り組みを上手くまとめることができました。

企業は生き物ですので、10年のうちに組織のあり方が大きく変わる場合があります。社史編纂においても柔軟に対応し、その時点でのリアルな企業の姿を残すことに意義があると感じました。

山田:今回の分社化や商号変更に象徴されるように、グループ全体が大きな転換点を迎えていることも踏まえ、まちづくりや新規事業に関する特設ページを設け、公共交通事業と並ぶ柱として紹介しました。2025年4月の泉北高速鉄道合併、2026年4月の経営体制変更や社会的使命の策定も盛り込めましたし、鉄道事業以外においても果敢に取り組んできた新規事業の歩みを年表として整理し、挑戦を重ねてきた企業姿勢を示しています。

このように当社は現在、“激動”ともいえる大きな変動に直面していますが、鉄道が祖業であることに変わりはなく、安全・安心の確保をはじめ、事故や災害など決して忘れてはならない出来事については、特集として記録しました。

最近の10年 写真:最近の10年 画像を拡大
最近の10年 写真:最近の10年 画像を拡大

書籍版とともに、過去年史も含めてとりまとめたウェブサイトも作っておられます。このねらいや現時点での効果についてお教えください。

山田:前回の130年史では社員にはDVD-ROMでの配布を行いましたが、今回はスマホの普及もあり、社内公開もネットを活用(PDFによる)、ウェブの社内報の中にも社史のPDFを入れて、社内で見てもらえるようにしました。

当社の特性上、歴史に関心を持ってくださる方も多くいらっしゃることも踏まえ、「作って終わりではなく活用されてこそ社史」という考えのもと、過去年史も含めて閲覧できるライブラリーとして一般公開することとしました。

その結果、公開後はSNS上で「社史を無料公開するのは珍しい」といった反響もいただいており、社外にも広く関心を持っていただけた点で、一定の効果があったと感じています。特に鉄道好きの方々にも喜んでいただいていると思います。

田渕:就職活動をしている人にも、社史を見てもらえたらと思います。NANKAIは鉄道のイメージが強いので、不動産や流通など多彩に事業をやっていることを色んな人に知ってもらえたら嬉しいです。

NANKAI社史 FROM 1885 TO 2025 写真:NANKAI社史 FROM 1885 TO 2025
https://www.nankai.co.jp/company/history/chronicle/

編纂作業をスムーズに進めるために、どのようなことに留意されましたか?

山田:編纂作業を円滑に進めるうえでは、関係各所との調整をいかにスムーズに行うかを特に意識しました。確認については、できるだけ早い段階で依頼するよう心がけました。また、各部門にとっては通常業務があるなかで追加の負担となる依頼であることも十分に想定されたため、メールの書面での依頼だけでなく、初回はできる限り直接足を運び、趣旨や背景を丁寧に説明するよう努めました。

園口:近10年というと最近の出来事のように感じられますが、人事異動や定年退職などもありますから、これまでの施策を満遍なく知っている方は多くなく、事実確認に苦労しました。

総務広報部(広報担当)の皆様 写真:総務広報部(広報担当)の皆様

「私も社史に載るような仕事がしたい」。
資料や年表を通じて会社の歴史に触れていくうちに、こんな気持ちをいだくようになりました。

社史編纂の主担当として完成まで走り切ったお二人は、実は入社してまだ数年。「若い私たちにできるんだろうか?」と戸惑いつつも、「社史編纂のタイミングで、広報に在籍しているラッキーを最大限活かしてください」という元役員の方の言葉に大いに勇気づけられたそうです。 積極的に社史編纂に取り組んでいかれる中で得た気付きについて、教えていただきました。

社史編纂担当に任命されたとき、どのように感じられましたか?

山田:入社3年目で社史編纂を担当することになり、正直なところ分からないことばかりで、大変戸惑いました。一方で、既刊年史がしっかり充実しており、120年史、130年史の編纂に関わった先輩も担当だったので、非常に心強く感じていました。

また、「社史編成のタイミングで広報に在籍しているラッキーを最大限活かしてください」と退任された役員の方からメッセージをいただいたことが印象に残っています。この言葉によって、不安の中にも前向きに取り組もうという気持ちを持つことができました。

田渕:私も入社2年目で社史編纂を担当することになり、自分自身が経験していない10年の歴史をまとめるという大きな役割に、不安な気持ちでスタートしました。一方で、報道機関からの問い合わせ対応の際に何度も社史を開いていた経験があり、歴史を1冊の形として残しておくことの重要性を実感していました。そのため、責任の重さを感じながらも、しっかりと取り組もうという思いで臨みました。

園口:私は勤続約40年のうち、25年以上広報に所属しています。しかし、今回の年史制作ではあまり手出しはせずに、後ろで見守ることにしました。「1から作りあげるとなると苦労も多いだろうが、その苦労も含めて若手に経験を積ませよう」という思いからです。10年後、150年史を作る際には、山田さんと田渕さんは他部署にいるかもしれませんが、社史制作の実務について広報の後輩にアドバイスしてもらいたいですね。


発刊した社史・記念誌は、今後どのように活用していこうとお考えでしょうか?

山田:発刊した社史については、150年の歴史に向け、社内外からの問い合わせ対応に積極的に活用していきたいと考えています。特に報道機関や一般のお客さまからは、当社の歴史や事業に関するお問い合わせをいただく機会が多く、その際の基礎資料として活用できる点は大きな意義があると感じています。

また、ウェブサイトで公開していることも含め、社史を広く開かれた情報として提供することで、当社への理解を深めていただくとともに、継続的に活用される資料として位置づけていきたいと考えています。


発刊後、編纂担当者としてどのようなことをお感じになりましたか? また、気づいたこと、学ばれたことはございますか?

山田:編纂を通じて強く感じたのは、オーラルヒストリーの重要性です。人に話を聞いて、その人しか知らない歴史のニュアンスのようなものをもっと社史に反映できればよかったなというのが心残りです。蓄積されている資料だけでも原稿自体は完成させられますが、当時の背景や判断のニュアンスまで含めたリアルなその時代の空気・歴史観を十分に伝えることは難しく、実際に関わった方々の声を記録しておくことの意義を改めて認識しました。

新規事業の歴史をとりまとめたページを設けたのですが、昔から新規事業をこんなに色々やっていたんだと知ることができたのはよかったと思います。「進取のDNA」「挑戦の歴史」とはよく言われますが、確かにそうだと納得しました。

進取のDNA 写真:進取のDNA

田渕:10年後の150年史、またもっと広く後世のためにも、しっかり記録を残すことの重要性を再認識しました。外部向けのニュースリリースでは「これからこうした取り組みを行います」と未来の情報を発信しますが、実際にはコロナ禍などのイレギュラーな事態によって延期・中止になることもあります。そういったことも社内誌に記録を残しておかないと、本来行われなかったことが「やったこと」として後世に伝えられてしまうことに気づきました。

また個人的な感想なのですが、資料や年表を通じて会社の歴史に触れていくうちに、「私も社史に載るような仕事がしたい」「150年史に書いてもらえるような仕事、プロジェクトに携わるようになりたい」という気持ちをいだくようになりました。


その他、御社ならではのユニークな事情、社史への思いなどございましたら、ぜひともお教え下さい。

山田:当社では「なんば」のまちで、より広いエリアの活性化を目指す“グレーターなんば”構想を展開中です。そのことを表したグレーターなんばを一望におさめた写真の撮影は、今回の社史での新しい試みの一つです。

当社所有の建物からの撮影だと当然、グレーターなんばの全域を写真におさめることができません。そこで近鉄様のご理解をいただいて、あべのハルカスの展望台(地上300m)から撮影をさせていただきました。この場所からですと、最近当社グループに入った通天閣も、グレーターなんばエリア全体も視野に入るし、NANKAI本社を中央に入れることもできます。今回のトピックスに合った写真を新しく撮ってよかったと思いました。

なんばのまちづくり 写真:なんばのまちづくり

140年史に期待すること

山田・田渕:2026年4月1日から新生NANKAIとなり、4月24日には「GRAN 天空」(詳細は下記URL)の運行が開始されました。その他、なんばエリアや通天閣のさらなる活性化、不動産事業の拡大、新事業の創造にも取り組んでおり、NANKAIは鉄道だけではない「まちづくり会社」として生まれ変わっています。

今回の140年史によって今までの挑戦の歴史は十分にお伝え出来るかと思いますが、同時にこれからも挑戦を続けていくんだというNANKAIの心意気を示せればと思います。

「GRAN 天空」公式サイトURL
https://www.nankai.co.jp/traffic/kankoutrain/grantenku/


お忙しいところ、ありがとうございました。

■株式会社NANKAI


1885年に創業された純民間資本によるわが国最古の私鉄・阪堺鉄道を前身とする会社。不動産・公共交通というコア事業を軸にしつつ、旺盛に新規事業を探索していくことで社会課題の解決に努め、地域のみなさまの「しあわせなくらし」創造に邁進している。従業員数は約3,000名。
【公式ウェブサイト】 https://www.nankai.co.jp/
【社史ページ】 https://www.nankai.co.jp/company/history/chronicle/

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