業界社史の研究 1. 建設業界編

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産業史としての性格が強い建設業界の社史・記念誌

建設業の社史の内容をみると、経営全般の内容を網羅したもの、施工実績を集約した工事史あるいは写真集のようなもの、日本の文化・風俗の歴史のなかに位置づけたいわば建築文化史的なものがある。また、本編とは別に資料編や作品編を別冊で刊行する企業もある。

協会や各種団体の記念誌には、その業界の歩み、いわゆる産業史として貴重な内容を含んだものが多い。

例えば、日本建築協会創立70周年記念出版の『住宅近代化への歩みと日本建築協会』(昭和63年)は、協会発足当時の大正末期からの住宅改良の歴史を中心に構成されている。

東京の土木工業協会編纂の『日本土木建設業史年表』(昭和43年)は、口絵に絵はがきに見る明治・大正・昭和と工事写真で綴る80年をおき、一般略年表、業界関連年表、史料編で構成されており、慶応3年以降の貴重な土木史年表といえよう。

東京都塗装工業協同組合編『塗装百年の歩み』(昭和53年)も、「協同組合編」「塗装沿革編」「塗装環境編」「塗装年譜」という内容で構成されており、塗装全般の産業史といえよう。

建築の歴史を表す各社の社史

業界最大手で190年以上の社歴を持つ清水建設では、戦前の『清水組略史』(昭和11年)から、『清水建設百五十年』((昭和28年)、『清水建設百七十年』(昭和48年)、『清水建設百八十年』(昭和59年)といった数冊の社史を刊行している。また同社では、大工、左官、土方、石工、瓦などの協力業者史の『清水建設兼喜会五十年』(昭和44年)を発行している。これは清水組の発生と諸職方(下請)との関係から説きおこしており、本文128頁に対して資料編が197頁と充実、明治以前の元請と下請の関係を知るうえで貴重な資料と思われる。  『〔安藤建設〕100年101歩』(昭和47年)はその序文に次のように記している。

 「お手元にお届けしたこの小冊子は、当社の創業100周年を記念して編纂したものでありますが、その主な部分は建築・歴史・風俗等の変遷を織りまぜた、この1世紀の間の移り変わりをつづり、いわば東京を中心とした街づくりの100年といえる内容のもので、従来の社史のイメージを払拭し、一般のかたがたも興味をもってお読みいただけるよう心がけたつもりでおりますのでなにとぞご笑覧ください」

実際、文明開化の風俗写真を多数使用した「明治の文化と建築」、カラー写真入りで作成された年表「世の中と安藤建設のうつりかわり」など、楽しい読み物として編集されている。

『岩崎建設百十年史』(昭和52年)、『鹿島建設百四十年のあゆみ』(昭和55年)、『戸田建設百年史』(昭和56年)、『〔佐藤工業〕110年のあゆみ』(昭和47年)など、周年数の多いのは建築業の特徴といえる。