約1年という短期間で『30年史』を作った“裏ワザ”

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見事なチームワークで“20世紀中に完成”の目標を達成

平成12年1月11日(月)、(株)江戸計器製作所(本社・東京都)の新年会会場で、鈴木太郎社長は恒例になっている新年挨拶の最後に「…正月の間に考えたことだが、来年の創立記念日、つまり4月1日に当社は創立30周年を迎える。年がかわれば、21世紀だ。そこで、ぜひとも20世紀中に創業以来の歩みをまとめた社史を発行したいと思う」と発案しました。そして、なにがなんでも今年度の終わりには銀行や株主、お取引先といった関係先、それに120人の全従業員に配布したいという、意思表示を行いました。

社史編纂の責任者に任命されたのは、社歴27年の総務部長田中和夫さん(51歳)です。田中さんは工場や営業畑を20年ほど経て総務に配属されましたが、編集の経験などまったくありません。というよりも、文章を書くこと自体が苦手で、社内文書の作成に当たってはいつも頭を悩ませていました。

田中さんがそのことを正直に申し出ると、鈴木社長に「君自身が文章を書くというような実務をする必要はないだろう。30年史発行の主旨をよく理解したうえで、専門家によるチームを作って君がまとめればいい。君は人の話を聞くのが非常に上手で、若い社員からも相談相手として頼りにされているじゃないか。それを生かせばいいんだよ…」と、逆に励まされる始末でした。

田中さんはその後、鈴木社長からなぜ『30年史』を発行したいかという思いをじっくりと聞かされました。最大の主旨は、会社の歴史をしっかりと整理・記録して社員を勇気づけるというものでした。

田中さんの独り言

困ったなあ、どうしたらいいんだろう…。 とりあえず広告やカタログを担当している営業部長に、当社とつきあいのある会社で社史づくりにふさわしいところがあるかどうか相談してみよう。

ところが、営業部長に紹介してもらって会った広告代理店や制作プロダクションの営業マンは、それぞれ「できます…」とは言うものの、どうすれば来年の3月までに社史を作ることができるかという田中さんの質問に対して、打てば響くといった感じの答えはありませんでした。

不安に思った田中さんは、かねてから「自分が担当した社史の評判がよく、社長賞をもらった」と自慢している叔父の山田博さんに相談することにしました。

山田さんの話

「社史というのは会社案内やカタログとはまったく異質のものだから、そういったものに経験の豊富な出版社に頼むのがいい。よかったら、私と仕事をした出版社のディレクター中村君を紹介しよう」

それから1週間後。

田中さんは山田さんに紹介された中村に会って、発行の主旨を手短に説明したあと、時間が少ないがなんとかならないかと相談しました。

中村さんの話

山田さんとは2年半ほど一緒に社史づくりをしましたが非常に気持ちよく働くことができ、その人柄にはうたれました。山田さんに頼まれたら、断れない気持ちですよ。

ただ、お話をお聞きして発行の主旨はよくわかりますが、時間がないのが問題ですね。どうすればご希望に沿えるものが作れるか、一度仲間とも話し合ったうえで企画書を作ってお持ちします。そのときにはぜひ、社長さんにも同席をお願いしたいと思います。

田中さんは中村さんと会うことになった顛末を鈴木社長に報告し、一緒に企画書の説明を聞く日時を設定しました。同時に、図書館等で他社の社史を自分なりに研究しました。

中村さんの企画書説明後の話

時間を最優先したうえでお望みの内容の社史を作るには、今ご説明したような方法がベターでしょう。ただし、そのためには編集作業の進め方や予算面で私どもの要望を認めていただかないとできかねます。なぜなら、私の意図ややり方を理解してくれる息の合った仲間とチームを組まないと不可能だと思うからです。彼らはプロですから意識も高いし、同時に能力も責任感も持っています。私自身も、あとに悔いを残すようなものは作りたくありませんから…。

田中さんはその後3度ほど中村さんと打ち合わせを重ね、彼の会社が作った社史を見せてもらいながら、社史づくりにかける気持ちなどを聞きました。また、中村さんの編集スタッフとも意見交換する機会を持ちました。

田中さんの独り言

中村さんたちの気持ちをうちの社史に集中してもらい、徹底的に無駄な時間を省けばなんとかなるかもしれない。

そのためには、自分も言い訳を考えないで、どうすればできるかだけを考えることだな…。

田中さんはそこで、

      1.中村さんの会社に依頼する場合の予算や作業分担表
      2.24時間作業のできる場所を神田の東京営業所内に設置する
      3.スケジュール表 ― などをまとめて、鈴木社長に決断を仰ぎました。
田中さんの説明

中村さんとその仲間のスタッフは信頼できると思います。仮見積書も、普通よりはやや高いかもわかりませんが時間的な無理や社史の質を考えると妥当なものと思われます。彼らには誇りと情熱がありますし、早急に中村さんの会社と契約を結んで具体的な編集作業に入りたいと思いますがいかがでしょうか。

鈴木社長

最初に会ったとき、私も中村さんのなみなみならぬ熱意は感じた。しかも、当社の『30年史』発行意図を“業界No.1宣言”と見抜いたのはすごいと思う。それだけの感性と経験があるなら任せても大丈夫だ。あとは田中君、君が社内をまとめて中村さんたちと協力して作業を進めてほしい。契約書の案ができたら持ってきてくれ、弁護士の先生に見てもらって不備な点がなければ契約しよう。

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