知恵を出してコストを落とす、社史づくりの例

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昨今、社史・記念誌づくりになかなか十分な予算が確保できない企業・団体が増えています。しかし、周年という機会を逃すと次の予定は早くても5年後、10 年後ということになってしまいます。それでは、歴史を語りついでいくことは難しいということで、予算を圧縮してでも発行したいという事情が多くなっているようです。

そこで今回は、予算が厳しい中でコストを抑えながらもなるべく品質は確保する、しかも見栄えもよくするという方法を考えてみることにします。

ただ、本づくりには実に幅広い知識や経験が必要です。そこで細部については、印刷会社や専門出版社に「こんな本にしたい」という要望をしっかりと伝えて、どのような工夫ができるかを相談されることをおすすめします。

1.印刷・造本上の工夫

1.規格寸法より少しでも大きいと本が大きく見える【サイズの工夫】

通常、本はそのほとんどがA4判やB5判といった規格サイズで刊行されます。ところが、印刷に使用する用紙は、機械で折って製本し、断裁して仕上げるための余裕のスペースがあります。

その余裕は1頁当たりにするとわずか10mm程度ですが、これをうまく活用すると5mm程度までなら横幅を大きくすることも可能です(B5判の場合)。

2.社史といってもケースつきがベストだとは限らない【装幀・製本の工夫】

一般に「社史」というと上製本で“ケースつき”の風格のあるものが求められるようですが、違った体裁を考えてみてはいかがでしょう。

例えば、表紙を布クロスから特殊紙(地模様や色のついた紙)へ、同時にタイトル箔押しから印刷に。こうするとコストを抑えやすくなり、さらに布クロス /箔押しの重厚さとは違った良さも表現できます。また、表紙を光沢処理(PP加工)したり、グラシン紙といわれる半透明の紙で巻いたりすることで、ケースなしでも立派なものにすることも充分に可能です。

装幀、製本の方法は実に多種多様ですから、本屋さんで多くの本を手にとって検討されるのも結構ですが、費用までは分かりません。そこに、専門家の存在価値があるわけです。

3.使用用紙で特徴を出す【用紙の工夫】

普通の白い用紙に黒のインクで印刷したのでは面白くない…という場合には、用紙の色や紙質を変えたり、インクの色を変えて特徴を出すことも出来ます。その特徴は、デザインとしての面白さや変化、色感の変化や組み合わせの面白さがあんがい図れることです。

例えば、口絵は通常のコート紙にカラー印刷、本文はコート紙か薄い色の上質紙に黒で印刷、資料編は本文とは色違いの色上質を使用するといったことです。また、そのような場合は、本文の構成にもよりますが、章別にインクの色を変えることもできます。

ただし、あまりにも凝りすぎるとかえって高くつくことになりますので、部数やその他の工程と併せて印刷会社などと十分に検討したうえで決めてください。

4.レーザープリンタの活用【制作方法の工夫】

制作する本の部数や頁数が相当に少ないとき、例えば40頁で100部といったような場合は通常の印刷にこだわらない方法もあります。  例えば、表紙回りだけ通常の印刷をし、本文は高性能のレーザープリンタで両面出力を行う方法です。最近は、レーザープリンタの性能が格段に向上して、少なくとも文字の美しさについては通常の印刷に劣らないものができます。

2.内容上の工夫

1.必ずしも、会社の歴史のすべてを描き切る必要はない【構成内容の工夫】

普通、社史や記念誌というと、全社を記述の対象にするとか、創業からの歴史をすべて描くものだと考えられがちです。しかし、ここで知恵を働かせてみましょう。

事業範囲が広く、しかも各部門が順次設置された企業の場合には、部門別の制作が可能です。例えば部門史、技術史、工場史、広告史、ラベル・パッケージ史などです。また、業界発達の歴史も取り上げて「○○社と□□産業の歩み」のような切り口のものも多く見られます。

2.時期を区切って編集する【対象期間の工夫】

社歴が長い企業の場合、創業から現在までを1冊にまとめることはたいへんな努力と時間を要します。もし、以前に制作された年史があれば、それ以降に的を絞った『最近20年史』といった編集が経済的です。既刊の年史がなければ、順次編集を進めるといった形で創業史、戦前史、戦後史と分割して逐次発行することも出来ます。

3.テーマを絞る【コンパクト化の工夫】
  • ・社員教育や企業のアイデンティティを確認する=社是社訓物語、社員読本、社長語録など
  • ・会社創業以来の創業者の事績と会社発展の歴史=創業者○○と◇◇社の歩みなど
  • ・創業者が高齢の場合、とりあえずインタビューをして記録を残す(談話と写真など)
  • ・社史発行を前提に、記録の整理を行い保存しておく=当社が編集した京都の生糸関係の組合では、その前史を含めた記録、生糸の誕生まで遡った本文、写真等の整理に5年前からとりかかり、50周年を機に刊行されました。
  • ・他部署との協力=会社案内担当部署との協力で会社案内に企業の歴史を読み物のような形で紹介する、社内報担当部署と協力して『社内報特別号』として発行するなど。

社史・記念誌等制作上の主な経費

印刷・製本費

      1.固定費:部数に関係なく一定している費用=組版代、製版代
      2.変動費:部数や仕様によって変化する費用=用紙代、印刷代、製本代など

企画制作費

      1.企画費:制作する本の規模、内容によって、また、どの段階から外注するかによって変わります。
      2.原稿執筆費(外注の場合):内容、取材回数及び行き先、原稿枚数、専門性、資料整理の状況等によって変わります。最初の段階から外注すると、企画費は多少かかりますがスムースで確実な作業ができます。
      3.リライト:枚数、元原稿の整理状態、リライトの範囲(内容検討、追加取材の有無、用字用語の統一、表記の統一、専門性)等で変わります。
      4.デザイン費:装幀、口絵、章とびら、資料編などデザイン性が求められる箇所は要求されるデザインレベルによって変わります。レイアウト費(主に本文)は写真や図版の点数、色数、レイアウトレベル等で変わります。
      5.原稿執筆費(外注の場合):内容、取材回数及び行き先、原稿枚数、専門性、資料整理の状況等によって変わります。最初の段階から外注すると、企画費は多少かかりますがスムースで確実な作業ができます。
      6.写真撮影:点数、場所(企業へ出向くのか、スタジオでの撮影か)、使用フィルム、拘束時間、技術レベル等で変わります。

外部スタッフを上手に使おう!

企画のとき―企画に必要な8つの条件(本誌4号参照)、(1)発刊時期 (2)本の性格 (3)発行の理由 (4)予算 (5)編集の場所 (6)作業分担 (7)制作方法 (8)部数や体裁…をスタッフと相談して明文化し、上司に報告できるようにします。ハッキリしないことは、上司と相談し、改めてスタッフとツメてください。

資料整理のとき―社内担当者の実情に合わせて、外注するかどうか決めます。外注の場合は、方法や期限などを決めて見積もりをとり、予定外の費用の発生を防ぎましょう。

原稿作成のとき―ロスのない取材を行うためには、取材先の選定が大切です。目的にもっともふさわしい人は誰か、どのような順序で聞けば効率がいいか十分に検討して、取材者(ライター、編集者)のムダを省いてあげましょう。

また、どのような形で入稿すればいいか印刷会社と事前に十分な打ち合わせをしておくことが必要です。例えば、表組の多い原稿の入力方法やDTPでデータを作成するときの使用ソフトやそのバージョンの確認など、その後の作業をスムースに進めるためには欠かせません。

印刷・製本のとき校正刷りや校正作業など、ツメの段階ではスケジュールを守ることが大切です。工程表に基づいた確実な進行管理が厳守されているか、目を光らせてください。

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