「何を集め、残すか」という仕組みを作る

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社史や記念誌を編集される際に、編集を担当される皆さんは資料収集という 作業にたいへん苦労されます。

ところが、せっかく社史編纂を機会に苦労し て体得されたノウハウが、社内で継続されないケースがみられます。会社に とって残しておくべき資料とは、何も社史を編纂するためだけに必要という わけではありません。資料収集と整理のルーティンを決めておけば、のち のち役に立つことも多いのです。

何が「必要な資料」か

社史や記念誌の編集に当たっては、資料が何でもかでもあればいいというわけではありません。

基本的には全社的な公式記録、しかも5W1Hに基づいたものが大切です。すなわち、文書としてすでに整理され内外に発表されている、下記資料を集めると、会社の動きがある程度把握できます。

      1.有価証券報告書、決算報告書、営業報告書などの公式重要書類
      2.年度計画書、短期・中長期計画書などの経営計画書
      3.社内報や会社案内、入社案内、経歴書、カタログやパンフレット
      4.創業者の資料や株式公開時の提出資料など

さらに、そういったものを部門ごと、事業所ごとに集めると、いわゆる各論に当たる部分が把握できることになります。例えば、営業関係だと営業方針や年度ごとのスローガン、受注高推移、営業体制の変遷でしょう。製造部門であれば主要製品の開発や販売に関すること、技術開発に関したものになります。その他に総務、広告宣伝、支社、工場ごとの動向や、取引先との関係、業界の動きなど会社を取り巻くさまざまな情報があります。

どうやって「収集」するか

まずは、担当者で集められる資料をリストアップします。決算報告書等の報告書類、社内報や会社 案内、カタログやパンフレットは比較的簡単に収集できるでしょう。次は各部署に依頼してどのような資料が残っているか調べます。この段階で、会社内にどのような資料が保存されているか全容がつかめます。

最後に、会社のOBや取引先、関連団体、業界紙を含めたマスコミなどへの調査や取材で社史編集のために必要な資料の不足分を補うことができます。

どのように「整理」するか

そうやって集めた資料に基づいて、縦軸に年度(年次)ごと、横軸にテーマごととしたマトリクス表、つまり「資料台帳」を作成してみると、どの部分の資料が不足しているかが一目瞭然にわかります。そこで、その不足の部分を埋める方法を考え、収集すれば資料はひととおり揃うはずです。

その次に、縦軸に年度を、横軸に情報の分類項目を配したマトリクス表の「年表台帳」を作ってみると、会社全体の動きがさらに鮮明にわかります。ここでいう情報の分類項目とは、経営全般に関わることか、総務に関わることか、営業に関することか、あるいは製造や技術開発に関することかということです。

この「年表台帳」は、分類項目の設定によって成否が決まりますから、慎重に検討してください。

この台帳にはどの程度まで書き込めばいいのかということをよく質問されますが、この台帳の目的は出来事の一覧性を持たせることですから、事柄のすべてを書き込む必要はありません。最低限、5W1Hがつかめるような記述であればいいでしょう。実際に原稿を書くときには、年表台帳索引の役割となり、実際は元資料や取材を参考にするからです。

いまや、パソコンは身近なものですから、それをフル活用して年月日、資料の出所、分類、事項の列を考えてランダムに入力しておいても、フォーマットを統一しておけばソートで並べ換えができますから、多人数で、例えば各職場別に入力してもデータの合成は簡単にできます。

そういったことを、職制にのっとった仕組みにしておくと、社史や記念誌の編集にあたっては資料収集や整理の手間がうんと省けます。文明の利器というものは、活用してこそ価値があるのです。

どんな「保存方法」がいいか

収集した資料は、文書や写真、インタビュー記録など社歴が古いほど膨大なものになります。そこで、いくつかの考え方が生まれてきます。

まず一つは、古い手書きの帳票類や機械、製品現物、広告看板などをそのまま残した記念館をつくるといった考え方です。この発想は、「企業博物館」として数多く見られます。百聞は一見に如かずということで、それなりの説得力もあり、さまざまな人の目にふれることで後世の参考になることは間違いありません。

次には、記念館というたいそうなことはできないが、現物はきちんと保存するといった考え方です。この場合は、社内に「資料室」といった形のものを設けることができればいいでしょう。ただ、古い文書や機器類、製品見本等は必ず劣化しますから、それに対する対策は不可欠で、それなりの手間や費用は必要です。

また、コンピュータや情報通信機器を活用して、デジタル情報として残す方法もあります。例えば、文書であればそのままスキャナーで読み込む方法もあれば、ワープロ文書にする方法もあります。決算報告書のように書式がととのったものであれば、表計算のソフトで保存することも可能です。

写真の場合は、収集した写真をすべて複写して同一サイズにプリントし、ネガと一緒にきちんと保存するというアナログ的な方法もあれば、スキャナーで読み込んでなんらかの保存用媒体(例えばCD-ROMやCD-R)に残すという方法があります。

ただし、パソコン等を活用する場合に注意しないといけないのは、機器の変化によってそれ以前のデータを再現不可能にならないようようにしておくことです。例えば、ワープロからパソコンに代えてそれまでのデータを無駄にしたといった経験はかなりの人がお持ちだと思います。つまり、そのような仕組みをどこまで管理できるかというのが大切なのです。

その一方で、社史編纂を機会に資料をすべて破棄してしまう、という考えもあります。重要な事項や会社のエッセンスはすべて網羅し掲載する、という方針のもとに社史を編纂し、過去の資料の役目を終わらせようという考え方です。現在の情報量の多さや時代の流れの速さを考えますと、過去の情報は社史に掲載したことですべてであると割り切ることも、現実的な選択であるといえます。

結局は、どのような資料を、どのようなやり方で集め保存するかというのは、それぞれのセクションの個人に委ねられるのではなく、会社としての仕組みをいかに作るかということにつきます。

個人の判断や気持ちに任せれば、当然のことですが個人差が出ます。それを避けるためには職制上の規約、厳しくいえばマニュアルを作成して「これだけのことはしなさい」というのがいちばんです。そういった積み重ねが、5年後、10年後の社史や記念誌の編纂段階で価値を持つことになるのです。

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