「社員参加の記念誌」として生き生きした歴史を総括して残す

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『開業90周年記念 街をつなぐ、心を結ぶ』(A4判 226頁、平成12年10月発行)のケース

社員参加を意識する

20世紀の総まとめ

同社はこれまで、「開業50年史」「開業70史年」という大作の社史を発行されている。さらに80周年では写真中心の記念誌を発行された。したがって今回の記念誌は、周年の節目ということとあわせて20世紀の総まとめをしようという意図で企画された。

まず編集担当者が考えられたのは、過去に発行された“これが社史だ!”という文章中心のものをどうやって乗り越えるか、20世紀最後の記念誌としていかに読者の注目を惹き、記録としても価値のあるものを作るか、ということだった。同時に、誰のための記念誌か? ということも併せて検討され、若い社員の意見も十分に採用して決定されたのが今回の記念誌である。

読む社史から、見る記念誌へ。できるだけ多くの社員に登場してもらおう…このコンセプトで構成案はつめられていった。

多くの社員登場と写真使用

基本的には写真集的性格が強かった「開業80周年記念誌」のバトンを引き継ぐ形で、「最近10年史」の記述に力を注ぎ、かつ通史として「写真で振り返る80年」を加えて会社の歴史や現状を視覚的に一望できるものにされた。また、できるだけ多くの社員に参加してもらおうと知恵を絞られた。  
そうやって決められた主な構成要素は下記の通りである。

      1.役員、社員、嘱託3,621人の名簿掲載
      2.カラーや白黒写真約190点を使用した「写真で振り返る80年」
      3.総頁数のほぼ半分をあて、写真約170点で紹介した各事業部の「最近10年史」
      4.エポックメーキングな出来事に関与された方が登場する32本の「コラム」
      5.夢のある未来を語った社長と若手社員6人による座談会「21世紀の京阪を語る」
苦労を乗り切った喜び

かくして高い目標を掲げたものの、90年という長い時間の完全なる事実の確認と資料の収集は簡単ではない。しかし編集担当者は、「間違いのない記述をする」ことにいちばん神経を使い、徹底的に調べたそうである。たしかに、企業の出来事は時間の経過とともにその真相はわからなくなるものだ。かといって、あいまいなことや嘘は書けない…そこに担当者の苦悩が生まれる。当然、担当者たちも完全なる資料が残存しているとは考えなかったそうだが、過去に遡って事実の確定をするということはやはり難しかったと振り返っておられた。

さらに、「可能な限りビジュアルで表現しよう」という意欲をあざ笑うかのように、欲しい写真ほど入手するのに苦労したという。しかし、企画の段階から「20世紀の記録となるものを!」と意気込んでおられただけに簡単には諦めきれなかったそうだ。グループ会社を含めて社内に電話をかけまくり、出版社にも協力を要請して、最終的にはなんとか満足のいく写真を手にいれることができたそうである。まさに、意気やよし!といえよう。また、編集においてはいかに目的意識の高さが重要かということの証左でもあろう。

日常業務との兼務でさまざまな苦労を経ながらも、担当者の意欲が実って同社の記念誌は予定の日に完成した。そして、読者の評判がすこぶる良かったこと、配布した同業他社広報マンから「こんな楽しい記念誌が作れて羨ましい」と言われて、それまでの苦労はおおむね吹っ飛んだそうである。

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