社史・記念誌の企画に必要な8つの条件

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「社史」や「記念誌」という本づくりのためには、いくつかの大切な条件があります。ここではそれを8つに分類しています。
これらのことが決まって初めて、具体的な編集方針の検討や設定ができるわけですから、最初の編纂委員会で必ず討議していただく必要があります。

1. When(いつから始め、いつ発刊するのか)

社史や記念誌づくりをいつから始めて、どの時期に発刊するかというスケジュールを初めの段階で決める必要があります。なぜなら、社史や記念誌はその大半が企業の周年事業の一環として制作されるため、自ずとその記念日に合わせる必要があるからです。

私どもが受注している社史や記念誌の場合、その多くは2年半から3年の制作期間をとっていただいております。それは、多くの資料類を収集して整理し、そ れに基づいた年表を作成し、検証し、同時に必要な写真や図版を集め、それをもとにして正確で質の高い原稿をまとめるにはそれくらいの年月が必要だという経験にもとづいています。

2. What(どんな性格の本を作るのか)

周年等を記念して出版物を刊行する場合に、どのような性格のものを作るのかということです

「社史」という形で会社の歴史を綴るものを作るのか、または歴史に重きをおくよりも周年を記念し、お祝いして、従業員やお取引先に感謝の気持ちを表すという主旨の「記念誌」を作るのかということを検討します。

ところで、私どもがお客様とお話をさせていただくなかで、「会社の歴史をまとめたいのに、創業者(経営者)一族の記事ばかりになってしまう。社史として はおかしいのではないか?」という声を聞くことがあります。確かに経営体の歴史の記録のほとんどが創業者の業績などで占められていると、ある意味で「公私 混同」とも受け取られかねません。

そのような場合は、「創業者の伝記」という切り口を持ち込んでみると問題が解決することがあります。たとえば創業者が会社をつくった当初でさほど組織化 されていない時期や、いまだ従業員数が少ない時期などは、創業者の人柄や考え方が、企業のあり方を大きく左右することが多いからです。

では、どんな指標をみれば「社史」「伝記」を区別できるかというと、当社の経験では「従業員数80人未満」「年数で30年未満」の場合は伝記の制作が適していることが多いようです。
なぜなら、創業30年未満の企業では、創業者その人を語ることがすなわちその企業を語ることになりますから「伝記」がふさわしいことが多いのです。反対に、企業は創業から30年もたつと組織化され成熟してきますから、会社としての記録が必要になるのです。

ただし、「80人未満」「30年未満」はあくまで目安であることにご注意下さい。
では「伝記」の要素をどのように表現するかといいますと、1つは、「社史」「記念誌」とは別に「自叙伝」「回顧録」あるいは第三者による「伝記」を刊行する方法があります。また、「社史」「記念誌」のなかに創業者の伝記や回顧録を盛り込む企業もたくさんあります。

3. Why(発行する理由)

発行の目的を明確にするということ、すなわち「わが社はなぜ『社史』や『記念誌』『伝記』を発行するのか」ということは、大切な条件です。

目的の不明確な出版は、主な読者である従業員に読まれない、いいかえれば何の感動も与えないという結果をうみがちです。それでは、編集に携わった方々の苦労も報われませんし、貴重な予算のムダ遣いになってしまいます。

したがって、この議論にはぜひともその企業の代表者、会長や社長といった方々に加わっていただいて討議することが重要です。

4. How much(必要な予算はどれくらいか)

予算の決め方には、通常2通りの方法があります。

1つは、発行を計画している企業が周年事業全体でいくらの予算をとることができ、その中から社史や記念誌にいくら予算をかけられるのかとしぼり込んでいく方法です。

例えば、周年事業にかける全予算を3000万円とし、その範囲内で社員旅行や記念式典を行い、社史も作るとします。その場合、まずそれぞれの行事にどれ くらいの費用が必要なのか考える必要があります。そして、社史には3分の1の1000万円の予算を組もうという方針が出れば、その範囲内でどのような本づ くりができるのかを考える方法です。

もう1つは、どのような内容や体裁の本を作りたいのかをまず十分に検討し、その費用を算出するという方法です。この場合は、なるべく多く他社の社史や記 念誌を入手して、それらの中から作りたいイメージに近い本を示しながら、制作会社や印刷会社から見積を取ります。この方法だと、実物を見ながらの計算です から、かなり正確な数字を算出することができます。そして、提出された見積数字に、社内でかかると予測される経費(担当者の人件費、資料収集の費用、コ ピー代等の雑費、配布のための費用等)を足して予算を組んでいくわけです。

5. Where(どこで企画、編集をするのか)

通常、社史や記念誌の編纂をする場合は、まず資料の収集から始まります。集めた資料は保管しなければなりませんから、社内のどこかに保管場所が必要になり ます。同時に、資料を整理・分類する作業場所も必要です。机、書棚、電話等を備えた独立した部屋を確保することができれば、以後の編集作業はうんと進めや すくなります。

また、地方で創業して長く事業を続け、発展し、現在は東京に本社を移転した企業があるとします。その場合、その企業の沿革や古い出来事を知っている人 は、本社よりも創業地に多いでしょうから、そこに編纂室をおくことも考えられます。その企業の事情によって、「どこで」ということは柔軟に考えていいと思 います。

このように、「どこで」ということは、社史や記念誌を作るときの前提条件として、たいへん大切な意味を持ちます。

6. Who(誰が何を担当するのか)

ここでは、社史や記念誌の全体を企画立案するための編纂委員会と、具体的な作業を進める編纂室の2つを考える必要があります。編纂委員会と編纂室の役割 は、明確に異なります。編纂委員会の役割は、さまざまな案件を検討し、決裁することです。その内容は編纂室から出されたここで述べている5W3H、つまり (1)〜(8)の条件に伴う事柄です。

これに対して、編纂室は例えば資料の収集や整理、取材や座談会の手配、原稿や資料編の作成、できあがった原稿のチェックといったような、具体的な作業をするところです。

例えば、外部のライターに依頼した原稿をチェックして、誤りをただし全体に整合性のあるものにするのは編纂室の仕事です。そして、編纂室がチェックした 原稿をそのまま発行していいかどうか検討し、決裁するのが編纂委員会の役割です。そこで出された意見や指摘は、編纂室に戻され、さらに整理・集約されて原稿に反映されることになります。

7. How(いかにして作るのか)

それぞれの作業を誰が担当するかが決まると、次にその人がどのような方法で作業を進めるかということを考える必要があります。

例えば、資料はどのようにして集めるのか、集まった資料はどのようなルールで整理・分類するのか、取材は誰に対してどんな方法で行うのか、年表はどうやって作るのかといったように、個々のプロセスにおける具体的な方法論を考えることです。

私どもでは、例えば年表の場合次のような「年表台帳」を 提案しています。これは、1年分で1枚の用紙を使い、縦軸に組織や事業内容を細分化した項目を配し、横軸を月別に分けた表を作って、それぞれの欄に出来事 を記入するようにしたものです。これにより年別、月別の出来事を一覧表として把握することができます。同様の主旨で、「資料台帳」「写真台帳」も提案しています。

8. How many(冊数や原稿枚数、写真点数)

予算が決まると、どういう体裁の本を作ることができるかということがある程度想定できます。

例えば、A4判で200頁のオールカラーのものを800万円で作りたいと考えても、無理です。もし800万円という予算が決まっているのなら、その予算内でどのような本が作れるのかを考えることが必要です。

頁数から必要な原稿枚数を計算し、使用できる写真点数(カラー、白黒)を想定しながら、全体像を固めていきます。
このように、原稿の枚数や写真の点数、制作部数といったことは予算設定にも大きく影響し、同時に本の中身を決定づける大切な要素です。

50年の歩みを400字詰原稿用紙100枚で書くのと、300枚で書くのとでは、その突っ込み方は大きく違ってきます。また、原稿枚数によって、資料の集め方や種類、取材の回数、取材相手の範囲といったようなことも大きく変わります。

以上の8つの条件を決めずに編集作業を始めてしまうと、その途中で方向転換をすることになってしまいます。そうなると、時間やコストのロスを生じることになりがちですから、これらについては事前に十分に検討していただきたいものです。

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