社史に必要な「情報源」はどこにあるか

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まず、情報の棚卸しを

会社から社史の編纂担当を命じられる方の多くは、初めての経験をすることになります。そのときに大切なことは、まずご自身の社歴を振り返ってみて、会社の歴史を自分がどの程度知っているのか、あるいはどんなことがわからないのか、自分自身の情報の整理、つまり「情報の棚卸し」をしてみることです。

自分の体験や、社内報、各種のドキュメントなどの情報をもとに、とりあえず年表を作ってみると、何がわからないのかが見えてきます。そして、その不足部分をどのようにして埋めていくか、ということが社史編纂の重要な作業となるわけです。 不足している情報を求めていく先として、当社では「ひ・げ・デ・アン・ば」という言い方をしています。つまり、人・現場・データ・アンケート・媒体のことです。

1.「人」は情報の源

社史の編纂に当たっては、OBを含めた社員から情報を収集をするということはもっとも重要な、また基本的なことです。 問題は、誰に聞けばいいのかということですが、いちばん情報を持っているのは、やはりトップの立場にいた、あるいはいる方です。会長、社長をはじめとする役員の方々、または工場長とか支社長など部署の責任者を務めた方、ときには組合の委員長なども多くの情報をおもちです。さらには、会社の生き字引と言われるような方がおられる場合は、貴重な情報源となります。

次に考えられるのは、古くからの販売先や仕入先といったお取引先です。そこには、製品や商品、それに伴うカタログやポスター類、販促関係の各種ツールが残っていることがよくあります。また、そこの関係者には自社の人との長いお付き合いを通じて蓄積された公式、非公式の情報があるはずです。礼を尽くしてお願いすれば、喜んでご協力いただけるはずです。

それから、業界の各種団体や組合、協会なども、大切な情報源です。企業によっては、自社が係わっている学会も含まれるでしょう。そういうところに残された資料、あるいは会長や専務理事といった方のお話からは、社内では得難い情報を得られることが多々あります。

業種によっては、消費者、エンドユーザーの方から情報を得ることができることもあります。例えばオマケで有名なグリコやフルタなどのお菓子メーカーでは、オマケのアイデアを公募しておられますから、そういうアイデア提供者からの情報も考えられます。

少し視点を変えてみると、役員や古い社員のご家族、つまり奥様やお子さんから、インフォーマルな情報を含めてさまざまな話を聞くことができる場合もあります。

そのように、さまざまな立場の人にお話を聞く場合に大事なことは、相手の方が、自分は何を話せばいいのか、どんな資料を提供すればいいのか具体的に分かるような依頼の仕方をすることです。

ただ漠然と「思い出をお聞かせください」といった抽象的な依頼では、有効な情報を得ることは困難です。今どんな情報が欲しいのか、ということを自分が認識したうえで、相手の方には事前に年表などの資料を渡しておき、「○○の件についてお話をお伺いしたい」「こんな資料の提供をお願いします」というようにはっきりした依頼が必要です。

また、情報収集のために座談会が企画されることがよくあります。しかし、8人、10人という多くの方々に集まってもらい、食事でもしながら回顧談を聞くという形では、懇親ということが前面に出てしまい、欲しい情報はなかなか得られません。もし座談会をするのなら、話していただくテーマを絞り、3〜4人程度に人選をして行うべきでしょう。

2.「現場」で実際に確かめる

新聞記者になると最初に、「現場に行ってみろ」と言われます。それは、現場で自分の五感を駆使して、例えば警察から発表された情報の中身を自分なりに吟味しろということなのです。

社史の編纂を担当する方にも、各地の支店や工場、場合によってはお取引先にまで足を運ぶことが要求されます。例えば、創業の地はいまどうなっているのか、近所の人に古い話を聞く、近所に住んでいた創業者や古参社員の家族に会う、といったことで思わぬ情報が得られることもあれば、自分の認識の幅が広がることもあります。

「人」とも関連することですが、OBなどに話を聞く場合も、相手の方の自宅にお伺いすることが、実はたいへん大切なことです。というのは、会社に来られてお話を聞くうちに、「その資料ならうちにあったのに今日は持ってきていない…」ということがしばしば起きるからです。

こちらから伺えば、古い資料やアルバムに貼りつけられた写真など、ご本人が重要さを意識していないものも入手することが可能になり、またご家族のお話を聞いたりすることで、より多くの資料と情報の入手が可能になります。

3.話を裏付ける「データ」

データとは普通、数値化できるもの、あるいは特定のテーマについて集約できる文字データをさします。このデータは、年表だけでは伺い知ることのできない会社のもう1つの側面をみる大切なものです。いわば、記録や記憶による歴史を、数字によって実証する役目を果たします。

データは、企業の業種や業態によって違いはありますが、一般的には売上高・利益・社員数の推移、それに企業が属する業界の伸び率などです。

売上高は、企業の成長を文字どおり端的に現してくれます。 利益は、売上の伸びとは必ずしも一致しません。例えば、バブル崩壊後のリストラの結果、売上高は同じにも係わらず利益を増やした会社もあれば、直販から代理店システムに販売方法を変更して利益を確保した会社もあります。

社員数の変化は、その企業の成長や減衰を現す大事なバロメータです。

業界の伸び率は、会社の成長率と比較することで、自社の成長度合いを測ることができます。仮に、業界が20%伸びているのに会社が10%しか伸びていなければ、たんに全体の伸びに引っ張られた成長とも考えられ、企業努力の結果ばかりとはいえません。

そのようにデータには、必ず会社の施策方針の結果が表れています。もし、いろんな試みをしたけれども、数字的になんの変化もなかった、というのであればその施策は無意味だったということにもなりかねません。結果には必ず原因があるわけですから、その原因を追求することでそのときの会社の詳しい実態を探求することも可能なわけです。

もう1つの捉え方としては、GDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)があります。どちらの指標を使うかは、海外にどの程度の生産拠点や営業網を持っているかなど会社の規模や業種によっても異なるでしょうから、一概にはいえませんが、そのようなグローバルな視点で会社を眺めてみることも必要です。

また、創業以来ずっと同じ分野の製品だけを生産してきた、あるいは販売してきた企業は多くありません。そのため、製品分野別の売上高推移というのは企業の歴史を知るのにたいへん参考になります。当社が社史づくりをお手伝いした企業でも、ある要素技術をもとに新技術を開発し、新分野に進出して業績を伸ばされたところがたくさんあります。

4.意見を集約する「アンケート」

当社には、企業等の資料や情報を収集・整理する「スキュワ・システム」と、アンケート方法を中心に企業イメージ等を整理する「企業文化調査システム」があります。企業を人にたとえるなら、スキュワ・システムで身体を知り、企業文化調査システムで心を知ろうというわけです。

なぜそういったシステムを構築しているかというと、社史編纂にあたっては、その会社の“企業風土”を知ることが不可欠だからです。企業のアイデンティティを知らずして、その企業を語ることは不可能です。

アンケートの対象は、当然のことながら社員が中心ですが、テーマによってはお取引先や顧客にお願いするということもあります。 アンケートの内容や実施方法等は、どのような目的の社史、記念誌を作るかによって決まります。

とくにインターネットの発達等によって、ある企業が実施されたようなコンピュータを使って不特定多数のお客様からアンケートを募って企業イメージを調査されたようなケースも、今後は増えていくものと考えられます。

5.第3者の目、「媒体」情報

テレビ、新聞、雑誌といったいわゆる従来のマスコミから、最近はビデオ、CD-ROMなどのような新しい情報媒体も増えてきています。 また、店頭登録をされている企業の場合は、証券広報センターなどに3、4年前までの関連記事が保存されています。掲載時期がある程度分かれば、新聞の縮刷版を利用して調べることもできます。

最近は、公共図書館などのコンピュータ化も進んでおり、記事検索やマイクロフィルムの利用もずいぶんと便利になっています。 さらには、東京商工リサーチ、帝国データバンク、日外アシストのような、コンピュータによってアクセスができる情報源があります。

以上のように、情報源へのアクセスは多岐にわたって可能です。それらの情報源を十分に活用し、内容の充実した社史を編纂されることを願ってやみません。