社史・記念誌づくりに必要な資料はどのように収集し、整理するか

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1.資料の収集

1. “資料”とはなにか

資料のなかに、ときとしてその会社にとって特別の意味を持つものがあります。

例えば、私どもが社史制作をお手伝いしたメーカーさんでは、ある時期、商品に対するクレームが多発したことがありました。それを重視した同社は、名刺サイズのカレンダーに、苦情の内容を刷り込み「二度とこのようなことが起こらぬよう、全社的に改善に取り組みます」という決意表明をされました。以来、そのことは同社の精神的バックボーンとなり、一連の努力がかえって信用を高めることにつながったそうです。

資料収集の時点でそのカレンダーが見つかりましたので、社史の口絵の最初に紹介することにしました。その小さなカレンダーはまさに、同社のアイデンティティを支えたものとして、実に貴重な資料となったのです。

資料収集もここまでできれば編集者冥利につきますが、実際には「当社には、本当に資料が揃っていません。とくに、古い頃のものは皆無に近いです」という場合が多いようです。

そのようなとき私どもは、「会社が存続してきている以上、資料は必ずあります。ただし、文書の形として整理されていないか、一カ所にまとめられていないだけです」と常に申し上げています。

“文書として整理された資料”とは、(1)決算書、社内報などの社内文書、(2)アニュアルレポートのような株主向け文書、(3)会社案内、ニュースリリース、経歴書、カタログなどを指します。 一連の文書としてデータがまとめられていない場合は、社内の各部署や担当者から収集したデータを、なんらかの基準に基づいて改めて整理する必要があります。

2. どの範囲まで収集するか

まず“何でも集める”網羅主義ともいえる方法。これは、ある意味では非常にオーソドックスで簡単なやり方です。私どもでは、会社内にどのような資料や情報があるかを一覧にした「企業資料リスト」をまとめ、お客様にご利用いただいております。

しかし網羅主義は、会社の歴史が長かったり、事業が広い範囲に及ぶ場合は、気の遠くなるような作業になります。したがって、時間や人員に制約のある場合にはベストの方法とはいえません。

そこで改めて、完成までの時間と予算、そして企画の主旨や発行目的などさまざまな角度から検討し、どのような情報を中心に収集するか決定することが必要になります。 そのような場合には、

(1)会社の歴史の流れを捉えるために売上高や従業員数の推移など数字的データを中心として集める
(2)それらの基礎データにどの程度肉付けできるかという出来事を中心とした周辺情報を集める、
という方法がとられます。

3. どんな手順で収集するか

一つの考え方ですが、とりあえず担当者だけで収集できる資料をリストアップし、そこから集めてみるのはどうでしょう。

まず容易に収集できるものとしては歴代の会社案内、営業報告書、社内報などが考えられます。それが一段落したら、財務諸表、有価証券報告書などより詳しいものを集めます。さらに詳しい情報が欲しければ、技術供与・提携等重要な契約に関する書類や稟議書など専門的なものを集めるというように段階的に“深める”のです。

収集情報の分類

次に、担当者だけでは集めることが困難な、他部署の情報をどうやって集めるか考えます。つまり、収集の“幅”を広げようというわけです。 例えば、営業活動に関する基礎的な資料として各種カタログやパンフレット、広告、マスコミの報道記録などが考えられます。また、経営幹部からのヒアリングも大きな情報源となります。

さらに突っ込んで過去のヒット商品の記録、技術開発関連資料などを探してみます。ここで、OBや一定年数以上勤続の社員、あるいは管理職のヒアリングを部門ごとに行うのも有力な方法です。

さらに詳しく知りたいときには、取扱説明書、各種サークル活動の記録、労働組合報などを調べるという方法もあります。

最後に、社外からの資料収集ですが、業界紙誌、業界団体や加入学会の出版物等を調べることで新たな情報が得られます。また同時に、同業他社の社史や記念誌、業界史や学術研究書なども、ときとして非常に役立ちます。

2.資料の整理

収集情報の分類

私どもではまず、「年表台帳」の作成をおすすめしています。

これは、「決算数値の動き」「重要な出来事」「人事」「営業」などの指標の動きを年次ごとにチェックしていこうというものです。大きな会社の場合だと、部門ごとにこの表を作成することになります。この指標を弊社では資料分類項目と呼んでいますが、どのような項目を作れば会社の動きが分かるかということは、その会社の業種や業態、社風などによって大きく違います。

ただし、この表はあくまでも情報の索引であって、個々の詳しい内容把握まではできません。

またこの時点で、一覧表をその後どのように利用するかということも、考えに入れておいて下さい。

どういうことかというと、一覧表を社史用に使用した後は不要だという場合は、手書きでもいいでしょう。逆に、せっかく整理して索引を作るんだから将来的にもその方法で情報を整理し、保管したいという場合は、コンピュータに入力しておくという対応の違いが出るからです。 集まった資料そのものの整理方法は、会社によって千差万別です。資料の形態や保存状態、内容によって最適な保管方法を検討することになります。 この段階で大切なことは、集めた資料の保管・整理作業のための専用のスペース、キャビネット等を予め用意しておくことです。これを怠ると、せっかく集めた文書や写真、図版などの貴重な資料が紛失する羽目になりかねません。

3.収集の結果が芳しくないとき

いままで述べられたような方法でやってみたが、もう一つうまくいかない。どうすればいいだろうか……このようなケースも皆無とはいえません。

その場合、まずそれまでの作業を振り返ってみて、(1)収集の目標を明確にしていたか、(2)手順どおりに進めたか、(3)他部署等に効果的な協力の依頼の仕方をしたかといったことを再検討する必要があります。 そして、どう見直してもこれ以上はムリだという場合は、原点に戻って企画の根本から考え直すこともまた、大切なことです。

社史の編纂は立派なビジネス行為であり、当然コストパフォーマンスが要求されます。ロマンティックな気持ちだけで、取り組めるものではありません。

例えば、会社としての資料は乏しいが、創業者の人格、考え方がいまでも会社の社風や企業精神の中に生きている場合は、創業者の話に絞ってしまうことも一つの方法です。現実に個人の伝記、その人の経営哲学を中心にしたもの、技術開発への取り組みを紹介したものなど、このタイプの出版物は多く、経営の参考書として書店で販売されているケースも数多くあります。 また、文書としての記録は乏しいが、写真は多く残されているという場合は、思いきって写真集にする方法もあります。逆に、文書類は残されているが、写真がほとんどないという場合は、イラストによって当時を再現することもできます。

なお、「社史」は、一般的には過去の足跡を丹念に記録しますが、会社の方針や経営環境によっては歴史にこだわるよりも、今後のビジョンに紙幅を割くほうが発行の意義が深まるということもあります。これは「記念誌」と呼ばれますが、「社史」と「記念誌」のどちらを選択するかは、その会社の考え方しだいです。