こぼれ話 研修効果もある社史の製作

研修効果もある社史の製作

業界の歴史に触れ、先達の足跡をたどる社史製作は、社員の研修の場にもなります。その効果を活用して、次代の経営者育成に役立てたのが建築資材メーカーT社でした。

同社の社史編纂事務局の活動を担ったのは、現社長のご子息Aさんで、他社で修行を積んだ後に入社して2年目という20代後半の課長でした。その下に若手社員2名がつきました。

とはいえ、初めての社史で、しかも75年史なのに昭和40年以前の記録はほとんどないという難しい仕事でしたので、事務局責任者として取締役総務部長が付き、これにOB1名が監修者のような立場で加わり、バックアップ体制が整えられました。しかし実務の中心はあくまでAさんでした。

それから1年半、Aさんは年表を作成し、取材に立ち会い、原稿チェックを取り仕切り、2つの座談会をコーディネートしました。

若いだけにフットワークは軽く、作業の早さに驚かされたこともありましたが、経験不足ゆえの早とちりや試行錯誤もありました。

いちばん印象に残っているのは原稿チェックです。たくさんの関係者から来る修正指示を「事務局で集約してください」と申し上げたら、単純に転記して戻してこられました。中には矛盾する指示もあって、これでは修正できません、指示の採否や矛盾点の解決は御社で行ってくださいと申し上げると「そりゃそうですね。道理で簡単に過ぎるなと思いました」

照れたようにおっしゃった声が今も耳に残っています。しかし、その解決は容易ではありませんでした。資料が少ないだけに、なかなか確証がつかめません。社内各所を当たり、業界団体にも自ら足を運んで裏付けをとられました。それでも事実が判明しなければ、どの証言をとるか、事務局で協議の上で判断しなければなりませんでした。

その過程はそのまま、業界史の勉強であり、関東各地に点在する工場関係者とのコミュニケーションの深化であり、物事の調整能力の錬磨でした。つまり、未来の経営者成講座の入門編だったのです。
(企画営業担当 吉田武志)

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